犬の分離不安症について

『分離不安症』飼い主がいないことが我慢できない症候群のこと。
穏やかな性格の犬に多いと言われています。
犬の精神的な症状の一つです。
愛犬とつねに一緒に過ごす時間が多い場合、飼い主に対して依存心が大きくなります。
その結果、飼い主の姿が見えなくなると不安になってしまいます。
家族の愛情に包まれて生活することが犬にとって幸せである反面、独りになる時間が少ないペットは、一人になった時に問題を起こすことがあります。

この症状を発症する多くは、「飼い主側の育て方」によるものが多いようです。
本来、犬は親から離乳した時点において、母親は仔犬に対し「独立」を促し大人になっていきます。

飼い犬は、離乳してから母親犬を離れ、人間が親代わりで育児を行うことになるため、「独立心」がうまく育たず、母親代わりの飼い主がいないと不安で問題行動を起こしてしまいます。
育て方によって起こる後天的なものが多いです。
犬の精神が十分に発達せず、精神的に未成熟であることが原因とみられています。

1. 来客時や帰宅後等興奮時に犬を触るとお漏らしをする（いわゆるウレション）
2. 小食である（拒食症である場合が多い）

。

3. 飼い主が出掛けようとすると異常に落ち着きがなくなり、吠え始める

。

4. 普段はきちんとできるトイレが、飼い主の留守中に限ってできない。
5. 普段はものを破壊しないのに飼い主の留守中に限って物を破壊する

。

6. 一人きりになるとパニックに陥り、自分の手足や尾を舐めたり咬んだりする。そのため、部分的に化膿したり、毛が抜けたりするなどの症状がおきる

自分の手足や尾を舐めたり咬んだりしているかの判断は次のようにしてみましょう。
薄い毛色の子なら手足や尾をチェックしてみます。水に濡れる要因が無いのに指の間や尾の毛が赤く変色していたり、濡れていたら、飼い主がいない間に舐めている可能性があります。
怪我や皮膚病が原因の場合は、どこにいても舐めたり掻いたりしますので判断の区別がつきます。

犬は快適と感じている状況でも手足を舐めたりとグルーミングをしますが、分離不安のサインとして自分の足を皮膚が赤くなる程ペロペロ舐めて皮膚炎を起こすことがあります。不安という“ストレス”が原因の皮膚炎は通常大型犬に見られ強迫神経症の一つと考えられています。

症状により、しつけ、あるいは少しずつ留守番の時間を長くしながら慣らしていく方法（行動療法）や
動物病院で投薬治療（薬物療法）を行うこともあります。

行動療法は
飼い主の外出や帰宅時における犬のパニックレベルを減少させることを考えていきます。

–外出前–
外出前に犬を興奮させる遊びをしたり、「いい子で待っててね」などの声をかけて外出することは精神的な落胆が大きくなり、不安感を助長させてしまいます。
外出前約30分はあまり犬を興奮させるような遊びをしないようにします。

–帰宅後–
帰宅後、犬が大喜びで尻尾を振り回して興奮している間は関心を向けないようにします。
「いい子にしてたのね、ごめんね」などと声をかけ頭を撫でることもできるだけ避けましょう。
視線も合わせず無視することが効果的といわれていますが、飼い主にとっては非常に辛いことです。
しかし、最初は大変でも続けて行くことで犬も変わってきます。
根気よく焦らず続けていきましょう。

帰宅後に破壊行動や不適切な排泄を叱ってはダメです。
犬は数秒以上経過した過去のことは叱られても理由が分かりません。

理由が分からないまま叱られることになり、犬の不安感を高めてしまいます。

分離不安を伴う犬に最も効果的な対処法は一人でいることに慣れさせることです。
同時に、一人でいることが楽しいことだと犬に関連付ることが重要です。

例えば出掛ける前にこっそりおやつをいくつかの場所においておきます。
犬に気づかれないように裏のドアからこっそりとでかけます。

留守番中、思いがけないところからおやつが見つかることで喜びがおきます。

外出時と帰宅時は控えめに行動することが効果的です。
帰宅したらはじめの数分は犬を無視します。とても辛いことですがとても重要なことです。

分離不安で、グルーミングを繰り返し、毛が抜けたり皮膚が赤くなったりしてしまう子には、獣医さんへの相談をオススメします。そのまま、繰り返していると皮膚の傷から感染症を引き起こしたりして、思いがけない病気に進展してしまうことがあります。
行動療法とともに、薬物療法によって、一人の時間をゆったりと過ごさせてあげることが大切です。